TypeScriptのコンパイラをGo言語でネイティブ化、10倍速にした「TypeScript Native Previews」が公開
マイクロソフトは、TypeScriptのコンパイラを始め各種ツール群をGo言語に移植することでコンパイラの処理速度を10倍速にした新バージョンとなるTypeScriptのプレビュー版「TypeScript Native Previews」の公開を発表しました。
Today we're announcing previews of the native port of TypeScript! These nightly previews will be available on npm and the VS Code marketplace!
— TypeScript (@typescript) May 22, 2025
npm install -D @typescript/native-preview
npx tsgo --version
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TypeScript Native Previewsはnpmとして「npm install -D @typescript/native-preview」コマンドでインストールできるほか、Visual Studio Codeで補完機能などを提供するランゲージサーバが拡張機能としてVisual Studio Marketplaceから入手可能になっています。
現状のTypeScriptコンパイラには速度やスケーラビリティに課題
TypeScriptは、JavaScriptに対して型システムを追加し、またJavaScriptの将来のバージョンで組み込まれるであろう機能を備えることなどにより、コードの品質や読みやすさを高める優れた開発者体験を実現することを目指したプログラミング言語です。
TypeScriptは、WebブラウザやNode.jsのようなJavaScriptランタイムを備えた環境で実行できるように、最終的にはJavaScriptにコンパイルされます。
このとき使われるTypeScriptコンパイラは、現時点ではTypeScript自身によって記述されており、通常はJavaScriptランタイムであるNode.jsのパッケージとして導入され実行されます。
しかしNode.js/JavaScriptによるTypeScriptからJavaScriptへのコンパイル(トランスパイル)は処理速度や大規模プロジェクトを処理する際のメモリ不足などの問題を抱えていたと、TypeScriptのリードアーキテクトであるアンダース・ヘルスバーグ(Anders Hejlsberg)氏は指摘しています。
TypeScript 7.0でネイティブ版がリリース予定
こうした課題を解決するために、TypeScriptコンパイラを始めとする各種ツール群をGo言語に移植し、ネイティブバイナリ化する「Project Corsa」が開始されました。
今年(2025年)3月にヘルスバーグ氏がProject Corsaを明らかにした際に示されたデモでは、Go言語によるネイティブ化されたコンパイラでは処理速度が従来の約10倍になっていました。
この高速化の要因の半分はネイティブコード化であり、残りの半分はGo言語の並行処理を利用したものだと説明されています。
Project Corsaは最終的にはTypeScript 7としてリリースされる予定です。
現時点でのTypeScriptはバージョン5.8であり、バージョン6.xも引き続き現行のTypeScript/JavaScriptベースで開発が進められる予定ですので、TypeScript 7.0の登場はまだ少し先のことになる見通しです。
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